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【メンバー日記】良き贋作


柳広司という小説家の作品類を今月はよく読んでいます。
(「作品群」でないのは、彼の作品を読んだ後、
孫引きのように出典、引用、参考文献など読んでいるため)

近年では映画化・アニメ化された「ジョーカーゲーム」が有名でしょうか。

映画版を見た妹が、
「イケメンばかりで誰がだれか入ってこなかった」
などと発言し、年齢を疑いました。。

ただ冨樫義博のLevelEのように、文章でこそ一番活きる作品だと感じているので、
映像化は個人的にちょっと・・・。

話がそれました。

柳広司 著 「贋作『坊っちゃん』殺人事件」。
言わずと知れた夏目漱石の『坊っちゃん』を題材とし、
その数年後のお話を書いたものです。

柳さんの作品は歴史的背景と物語のギミックが、
高レベル(自社比)で合致しているのに感心させられっぱなしなのですが・・・

『坊っちゃん』で出てくる文章、
キャラクターのセリフ、
それぞれの裏に流れるその時代風景を柳さんが解釈して、
 「贋作『坊っちゃん』殺人事件」で扱われる殺人の動機になっていくという。

※一部ネタバレ
時代背景は明治末期、
日露戦争の頃で、自由民権運動と社会主義の対立、
その自由民権運動の会合が多く行われたという温泉地に赴任した『坊っちゃん』。
『坊っちゃん』の目を通しての世界「坊っちゃん」と、
『坊っちゃん』ゆえに見えなかった世界を描いた 「贋作『坊っちゃん』殺人事件」と。

もちろん、キャラ崩壊や解釈への疑問もないではないですが、
非常によく組まれていて、読んでいて楽しい作品です。
(くどいようですが、あくまで自社比!)

んで、「良き贋作」。
解説の大矢博子さんいわく、
「本家を読みたくなるのは、よき贋作の証左である」と。
(引用ではないので、このままの文ではないはずです)

一般的にピアノを弾くという人々がたしなむ、「クラシック」というものの命題は、
プロとして突き詰めるほどに、
「作曲家(原作)の意図を、いかに受け手に伝えるか」であり、
受け手はその「作曲家の意図」を知る手掛かりとして
演奏を聴く、解釈を楽しむ、というものだと私は認識しています。

つまり照らし合わせるなら、
作曲家の意図を知りたいと受け手に思わせる贋作を作ることが、
良き演奏家なのだ、ということなのだろうかと。

(贋作否定主義者ではないです!
工芸品で、良いとこ取りで本家を超えると個人的に感じた贋作はたくさんあります)

・・・私としては、自分の演奏を聴いた人が、
「この人の解釈する○○の作品を聴いてみたい!」
と思えるような演奏をできればいいなと。

その作曲家がメジャー・マイナーに限らず、まったく知らない曲でも、
「…何これ…ナニコレ何これ!私も弾いてみたい!」
と思って、その作曲家の別の曲も知りたくてたまらなくなるような。。

そんな演奏が、私なりの「贋作」。

PH会の二次会は、
「贋作」の範囲がピアノ演奏以外にも及ぶので、
私の欲しい贋作は増え続ける一方です。

おかげでここ数か月、なんだか焦っています・・・。。。


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