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【メンバー日記】お城の歩き方(ガチ)


突然ですが日本にはどれくらいの数のお城があるか、皆さんご存じでしょうか?
お城と一口に言っても、古代の遺跡や柵で囲った建物もお城にはいるのか、台場や砲台もお城に含めていいのかなどいろいろあいまいなものもたくさんあるのですが、大雑把に中世(鎌倉時代から安土桃山時代まで)に建てられた防御施設の数を対象とすると、小さいものも含め2万~5万のお城が建てられていたようです

かなり開きがありもはや正確な実態などわからないと言ってもいいのですが、その中でも国の史跡や文化財に登録されているものはざっと1800件ほどだそうです。
この中でお寺や神社などを除いて城と思われるものを抜き出してみると大体200件くらいなのだとか。
過去数万単位で作られていたお城も現代までしぶとく生き残った物はかなり少なくなってしまっているようです。

恐らく皆さんにとってお城のイメージというと、

このような建物を想像するのではないかと思います

これは正式には「天守」と言って元々は物見やぐらのような見張り台であったと言われています
それが時代を経て平和になるにつれて儀式や迎賓の場、有事の際の避難所のような性格を帯びていきました

ただ、この天守がないからお城ではない!ということは全くなく、世の中天守がないお城が圧倒的多数です。(ちなみに江戸時代から建ち続けている天守は全国で12城あります)
そしてそのようなお城にもたくさんの魅力が詰まっており先人たちの息吹が伝わってくるお城が数多く存在します

今回はこの天守があるないに関わらず、城郭検定準一級保持者の責務としておススメのお城を完全な主観に基づいたランキングにして紹介していきたいと思います

ちなみに、お城の分類ですがざっくり以下の三種類に分けられます

①山城
②平山城
③平城

ざっくりどんな分類かというと
①の山城は文字通り山に築かれたお城です。お城とはもともと防御施設のため、攻められにくく守りやすい山の上に築かれることが多くありました
山に作られたため、開発などの影響を受けることなく当時の状態をそのまま保ったまま自然に還っていったものもあるため当時の城のつくりを一番よく知ることができます
ただ山なのでたどり着くのが大変だったり交通の便が極端に悪かったりします

②の平山城は山ではなく平地にある丘陵や台地を利用して作られたお城です
姫路城や仙台城、熊本城など一般に名の知られた城の多くがここに分類されます
今でも観光地として活用されているためなじみがあるお城も多いですが開発や宅地化などで当時の姿からだいぶ変わってしまっているものも多いです。また太平洋戦争で一番被害を受けたお城が多いのもこの分類。
明治から昭和にかけて軍の施設がお城に集中していたため集中的に空襲を受けることも多かったためです

③の平城は平地にあるお城です
代表的なものだと二条城や江戸城などがあります(江戸城は今でこそ平地ですが当時は丘陵にあったため平山城扱いされることもあり)
なんといっても交通の便が良い市街地のど真ん中にあったりしますが、そのせいで結構破壊されているものも多いです
特に市役所や県庁、学校など行政施設が跡地に立っていたりするため見学してわかるのが堀と石垣位ということもあったりします(福井城や佐賀城は地域の政治経済の中心地となっています)

今回はこの分類に従ってそれぞれ紹介していきます

まずは【山城部門】

第三位 砥石城(長野県上田市)

長野県、上田と聞いてピンときた方もいるのではないでしょうか?
2016年の大河ドラマ「真田丸」で脚光を浴びた真田氏のお城です

東太郎山の尾根上に築かれ、尾根伝いに歩くと他に米山城や枡形城など他のお城に行けるまさに山全体がお城という要塞。
真田氏が治める前は村上氏という大名が所有していましたがこの城を山梨県の名将、武田信玄が攻撃します。
しかしあの信玄をもってしてもこの城は落とすことができずかえって信玄が大敗北を喫します(砥石崩れと呼ばれる、武田信玄の数少ない負け戦です)

このありさまを受けて信玄は家臣の真田幸綱に攻略を命じますがなんと幸綱はこの城を一日で落としてしまいます。この城の城主を調略で寝返らせたのでした
この功績によって砥石城は真田氏のものになります(この幸綱の息子が真田昌幸、孫が真田信之、信繁兄弟です)

ロープがあることからも分かるように、結構急な斜面を登らされます。絶対にこの城攻めたくない
ちなみにこの山の標高は789m。東京の高尾山が標高600mくらいのため結構高い山でもあります。ただ高尾山と違って道が補導されていないしお店もない・・・

ちなみにこの城はとあるアニメの舞台にもなりました。

細田守監督作品の「サマーウォーズ」です。おばあちゃんの家のモデルがこのお城でした。(ちなみにおばあちゃんの知り合いの名前も全員武田家の家臣とつながりがある)

第二位 安土城(滋賀県近江八幡市)
皆さんご存じ、あの織田信長が築いた最後のお城です
今放映している大河ドラマ「麒麟がくる」でも完成していました。

写真で見ても分かるように延々と石段が続きそれを石垣が取り囲むというかなり固いお城。
当時は琵琶湖に接していたそうですが現在は埋め立てなどでその面影はありません

また山城なのに道の幅が広くくねくね曲がっていないことからも防御性能は結構劣っているつくりになっています

恐らく織田信長はこの城を軍事拠点というより政治的な機能を優先させて作ったのではないかと言われています。

頂上の天守閣跡には当時の礎石(天守を支える柱が置かれた石)が残っています
結構狭い区画なのですが、壺などのかけらが見つかっており信長はこの天守で生活していたのではと考えられてます
この本丸の少し下には信長のお墓もあります

城の周辺にはミュージアムや資料館も充実しており信長ファンにとっては垂涎ものの史跡です

第一位 竹田城(兵庫県朝来市)
一昔前に雲海が見える城ということで話題になりました

こんな感じ(拾い写真です)

日本のマチュピチュと形容されることも多いお城ですが、やはり山頂に築かれた石垣の威容さには目を見張るものがあります。当時の大工さんの労苦がしのばれます。というかこの城にも赴任したくない


標高は350mですが城のつくりが虎が臥しているように見えることから虎臥城という別名もあります。
眺めも最高。
兵庫県は昔から合戦の場になりやすく、この竹田城も守りやすいようにという意味を込めてここまでの石垣を積み上げるようになったのでと言われています。
竹田城のように加工していない石を積み上げていく様式は「野面積み」と呼ばれ、戦国初期に見られる石垣の積み方です。結構武骨な印象を受けます。
これだけの石垣を保存するのは大変なのか、入山するにもお金がかかりますがそれでも登城する価値があるお城です

続いて【平山城部門】

第三位 小田原城(神奈川県小田原市)
戦国時代に関東地方を治めていた北条家のお城です
町全体を堀で囲った「惣構え」と呼ばれる防御施設をもち、上杉謙信や武田信玄といった戦国を代表する名将に攻められても守り抜き、最後豊臣秀吉に20万の大軍で包囲されても1か月粘った堅城です

この天守閣は再建されたものですが中は資料館となっています
特に小田原北条家に関する資料が充実しています

山城には見られなかった立派な門もあります。これは常盤木門と呼ばれ、本丸に直結する門のため堅固に作られていました。
この小田原城は「枡形」と呼ばれる城のつくりを多用しており

門を入ってすぐに曲がってまた門を設けることで敵軍の移動を遅くすることができ、その間に側面の壁から弓鉄砲で攻撃できるようにしています
まさに人を殺るための城です。絶対に攻めたくないPart2。

城の外にも惣構えの堀跡が残っており、北条家の土木技術の高さがうかがえます

第二位 彦根城(滋賀県彦根市)
ひこにゃんのお城です
この城も人を殺るための城

天守はこのように小さめなのですが、この天守に行きつくまでの門が

こんなでかい門
このつくりの何がえぐいってまず門の前にある橋は防御できる部分がないから普通に進んだら弓鉄砲の餌食だし橋の下も普通に射程範囲内だしでどこにいても狙われるつくりになっていることです

普通本丸まで攻められたら降伏するのが常道ですがこの城は最後の最後まで戦い抜くことを想定していたと思われます。超体育会系。
なによりこの城を作ったのは徳川家康きっての重臣、井伊直政、井伊直孝親子。
2017年の大河ドラマ「おんな城主直虎」でフィーチャリングされたあの家です。この彦根城は西日本で何か起きた際に江戸城があると動くには進ませないという覚悟を体現した城でそれを守るのが井伊直政という家康に絶対的な忠節を誓った武将ですから最後まで戦おうとしてもおかしくありません。ほんとと絶対に攻めたくない

第一位 高遠城(長野県伊那市) 新府城(山梨県韮崎市)
最後はどうしても順位が付けられず同立一位としました

というのもこの二つのお城は山梨県を拠点に戦国時代を彩った戦国大名武田家の最期を語るお城だからです

1582年、本能寺の変が起きる4か月前に織田信長は宿敵の武田勝頼を滅ぼすことを決意、大軍を山梨に差し向けます
この時高遠城では武田勝頼の弟、仁科盛信が城主となり勝頼のための奮戦、城兵玉砕というすさまじい最期を遂げます。お兄ちゃんを守っての奮戦という弟心が泣けます。

高遠城にはこの橋のほかに土塁や石垣も残っていますが、なんといっても落城してもなお重要拠点であったことから江戸時代でも藩の中心城郭として機能したことが魅力の一つです
この城はまた桜が有名なのですが(ググってみてください。山がピンクになります)、この桜は何と東京の新宿でも見ることができます。
江戸時代の高遠城の城主、内藤氏の屋敷が今の新宿にあった縁で高遠城の桜が新宿にも持ってこられたのです。

そして新府城は勝頼が武田家を守るために作っていた最後の城です
元々あった武田家の館では防備が不十分として真田昌幸が総奉行となって新たな城を作っていました

今では神社と堀や土塁跡が残っていますが、当時の武田家の築城技術の粋を集めた最新の城ということで織田家との戦いでも活躍してくれるという期待があったのですが完成前に信長が侵攻を始めてしまい不完全のまま放棄されてしまいました

城の側面をきりだった崖が守り、正面をこのようなうねうねした堀と土塁で守る想定だったようです
現在発掘調査が行われ、改めて武田家の築城技術の高さが評価されて来ています

ということで最後は【平城部門】

第三位 躑躅が崎館(山梨県甲府市)
誰の城?って思う方も多いかと思いますが、武田信玄が住んでいた舘です。つつじがさきやかたって読みます
現在の山梨県の県庁所在地、甲府は信玄のお父さん、武田信虎が開いた城下町でその後この館を中心に発展しました

ちなみに信玄パパの肖像画はこれ

目や顔の輪郭がなかなかリアルというか怖い風貌なのですが、これを書いたのは信虎の息子で信玄の弟である武田信廉という人
画家としても才があった人と伝わっているので本人に似ているとは思うのですが、やはり怖い人だったのでしょうか・・・

さて、その躑躅が崎館ですが現在は武田神社という神社が建っており資料館も小さいながらあります
ほうとうのお店も駅から行く途中にあったりとグルメも楽しめます

信玄の残した言葉で「人は城 人は石垣 人は堀」という言葉があり、人こそ宝だからこれがあれば堅固な城は必要ないとして山梨県内にはあまりお城がありません
そのためかこの館も結構簡素な作りになっているのですが周囲には堀が巡っており立派に防御施設も備わっていました。

第二位 大阪城(大阪府大阪市)
みなさんご存じ、豊臣秀吉が築いた天下の名城です

今の大阪城は徳川家が立て直したもので秀吉が作った大阪城はすっぽり今の大阪城の地下に眠っています。盛り土をして埋めちゃったわけです。そんなに嫌っていたんか・・・
何より大阪城は大坂夏の陣でその堅固さが実証済み、真田信繁などの戦国最後の武将の軌跡が残るなどファンにはやはりたまらん城郭です。石垣とお濠も規格外の迫力です。

また天守の横には旧陸軍の司令部が当時の外観で残っており近代建築も楽しむことができます。今は商業施設になっています

豊臣時代の大阪城は残っていませんが、その名残を今に残すものとして、大坂夏の陣で自刃した淀殿と豊臣秀頼のお墓が天守閣のすぐ近くにあります

第一位 松本城(長野県松本市)
一位は松本城ですね。江戸時代から現存している天守閣を擁し国宝にも指定されている名城です

天守閣が黒いというのもいいですね。渋い
ちなみに天守の色にはこのように黒い物もありますが大阪城のように白いものもあります
これは外壁の塗り方によるもので、白い壁は天守の外壁を漆喰で塗り固めたもので白い外観となりますが水分を通しやすく定期的に塗りなおさないと内側の壁が劣化するという弱点があります。
何年か前に姫路城が大幅な塗り替え作業をしていたのはこのことによります

対する黒い天守は漆喰で塗った上からさらに柿渋(かきしぶ)や黒漆を塗った板を重ねた「下見板」を張る仕上げ方です。しかし黒漆は当時高価なもので劣化も早いことから維持費を拠出できる大大名しか使えないものでした


歴代城主の家紋と名前が入った灯篭がいい味出してます
元々はこの松本城のある土地は沼地だったため明治時代には天守の重みに地盤が耐えられず傾いてしまったり、利用価値がなくなって競売にかけられるなどいろいろ多難な人生ならぬ城生を生きてきたわけですが今ではこうして立派な姿を世に残しています

というわけで全部で10城ほど紹介しました
気に入ったお城は見つかったでしょうか

お城に行ってみたいけど資料館とかは別にいいかな。。。っていう人は夜に行ってみるのもいいです
なぜなら・・・

こんな感じで天守閣のライトアップをやっています(時期やお城によりますが)
この時だけは普段男しかいないお城にもたくさん女性がいたりします

今回紹介したお城は本当にほんの一例です。
何しろこの国には数万単位でまだまだお城が眠っていて、いまだ人の目に触れたことのない城もあったりするわけです。もしかしたら今皆さんが住んでいる場所も昔はお城だったということもありうるのです。

社会が落ち着いたら思いっきり城巡りしたいですしこの会でも城巡りツアーしたいです

おわり

by R.O

ピアノ歴:小学生6年間、現在~
好きな作曲家:久石譲 ドビュッシー ラヴェル
その他の趣味:日本史、書道、読書、旅行、ゴジラ映画を見ること、在宅勤務中にyoutubeでクラシックと歴史解説動画を聴くこと

ところでついに大河ドラマ「麒麟がくる」が最終回を迎えます。近年でもぶっちぎりで面白い大河でした。
このままいくと変の動機は痴情のもつれ、本能寺の恋ということになりそうですが果たして・・・


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