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【メンバー日記】ただひたすら「青天を衝け」を褒め称える日記


題名の通りです。音楽の話は1ミリも書きませんのでご容赦ください。

先日、大河ドラマ「青天を衝け」が最終回を迎えました。
前作の「麒麟がくる」が年を跨いで放映されさらにオリンピックの影響もあって全41回というかなり短い期間での大河ドラマでした。

当初は私も「幕末大河って大体つまらなくなるし(失礼)主役が吉沢亮だしどうせイケメンスイーツ大河笑になるんだろうし(失礼)あまり話題にならないでしょ(失礼)」と思って熱心に見る気はなかったのですが、いざみてみるとなんたることか。見事に期待を裏切られました。今はまさにこんな思いでいます。

ということで今回は「青天を衝け」の良さをただひたすらに語って贖罪しようと思います。

予備知識として、2021年の大河ドラマ「青天を衝け」は吉沢亮さん演じる渋沢栄一を主役にした大河ドラマでした。渋沢栄一は最初江戸幕府に仕える幕臣でしたが明治になってから実業家として活躍、今の日本経済を支えるいくつもの企業を作り、新一万円札の顔となる人物です。

①脚本が神
今回の大河の脚本家は大森美香さんという方です。
ブザービートやマイボスマイヒーロー、朝ドラの「あさが来た」を手がけた脚本家です。
この方の脚本がとにかく神がかっていました。

青天を衝けでは序盤で幕末の「攘夷運動」(幕末の開国後に増えた外国人を排斥しようとした運動)をかなり取り上げていました。それは渋沢栄一自身が史実で攘夷運動に入れ込んでいたという事実もあるのですが、近年稀に見るほどこの運動を描写し、さらに「民衆の一時的な熱狂」という側面でこの運動を描写しました。

ここまでは大河でよく描かれるのですが恐ろしいのは最終回に近づいてから。明治から大正にかけて起きたアメリカでの「排日運動」(明治に日本からアメリカへの移民が増え、働き口を失ったアメリカ人による日本人排斥運動)に攘夷運動を重ねてきたのです。

渋沢栄一が若い頃に入れ込んだ攘夷運動が、半世紀以上経って「排日運動」というアメリカから見た攘夷運動で栄一を苦しめるという、壮大な伏線回収がなされました。

渋沢栄一を軸にストーリー構成を考え、一年間その軸からブレなかった大森美香さんやスタッフの皆さん、本当に凄いと思いました。

②草彅慶喜が神
草彅剛さんが演じた徳川慶喜が最高でした。
徳川慶喜というと、「大政奉還により江戸幕府を滅ぼした将軍」というあまりありがたくない評価があり、本作でも同じような描かれ方がされましたが、今作では明治以降の慶喜も描いて彼の葛藤を丹念に描いてくれました。

作品中では慶喜が自身のことを「輝きがすぎる」と評し、英邁の誉れ高い人物として描かれましたが戊辰戦争以後は一転、朝敵となってただひたすら社会的に消えようとする姿が印象的でした。自分が旧時代を代表する人物として、旧幕府軍の旗頭にされることを恐れたと言われていますが、彼なりに国を守ろうと足掻き、栄一と話すときだけ本心を見せる姿が胸を打ちました。

晩年では明治政府の力が高まって良くも悪くも自分の影響力が低くなったことを感じた慶喜が自らの伝記を残す姿が描かれましたが、最終登場シーンで見せた「快なり、快なり、快なりじゃ!」と叫んでにっこり微笑むシーンはもう最高でした。歴史の証言者として「生きていれば楽しいこともある」ことに気づいた最後の将軍の会心の笑顔がそこにはありました。

明治維新で討伐される側であった自分が「生き残ってしまった」ものの、生き残ったことの意味を見つけ、生きていれば楽しいことがあることに気づいて死にゆくという、ここまで先人への愛に溢れた幕末大河が過去にあったかと思わされました。

③主人公だけでなく、周りの人が神
渋沢栄一を主人公にしたことの利点、それは人物や逸話の面白さに留まらないところでしたが、最大の長所は彼の言動が現代的価値観に通じることであったと思います。

大河ドラマってたまに現代的価値観に合わせようとするあまり、戦場に立った武士に「人が切れません!」とほざかせたり、「好きでもない人と結婚するんですか?」と女性に言わせたりと、当時の価値観をガン無視する横暴が行われていたのですが、今作では栄一がベースとなる価値観として『ビジネス的にペイするかしないか』という政治や信条に左右されにくい商売思考を持っていて無理に現代の価値観に合わせずとも素で視聴者が共感出来るものでした。

そして栄一の周りの人物、奥さんや上司、同僚、息子たちなどがそれぞれ個性が立っていて「主人公の周辺が面白い」大河ドラマでした。

何より成功者としての栄一ではなく、幾度も挫折し失敗した栄一を描き、
尾高長七郎、平岡円四郎、藤田小四郎、渋沢平九郎といった志半ばで斃れる、或いは志を挫かれた人々を登場させた上で、彼らは皆、有り得たかも知れないもう一人の栄一のifルートとして視聴者に見せつけてきたことも、この作品に奥深さを与えた一因であったと思います。とにかく出てくる人物が魅力的すぎました。

以上、ここまでただひたすらに「青天を衝け」を褒め称えてきましたが、とにかく今回の大河はいろんな期待をいい意味で裏切ってきたステキな作品でした。時代が全然違うのに徳川家康を語り役として登場させたことも、初めは意味がわかりませんでしたが今となっては明治以降の近代が江戸幕府の礎の上に成り立っていることを示すためには必要不可欠だったと思えます。

とにかく2021年はこんなステキな大河に出会えて幸せな一年でした。思わず仕事納めの喜びから酒を飲んで書き殴ってしまいました…

来年は鎌倉時代、北条義時を主役とした中世大河です。
細川重男さんという歴史研究家が義時のことを「義時の生涯は降りかかる災難に振り回され続けた一生であった、その中で自分の身と親族を守る為に戦い続けた結果、最高権力者になってしまった」と評価していますが、三谷幸喜さんがこの義時をどう描くのか、今からとても楽しみです。

ちなみに渋沢栄一、慶喜の墓は谷中霊園、上野のすぐ近くにあります。上野といえば年明けに奏楽堂でニューイヤーコンサートが開かれます。

ぜひコンサートを聴きつつみなさんには史跡巡りをしていただいて「青天をつけ」の魅力を知ってもらえたらと思います。

おわり

by R.O

ピアノ歴:小学生6年間、現在~
好きな作曲家:久石譲 ドビュッシー ラヴェル
その他の趣味:日本史、書道、読書、旅行、ゴジラ映画を見ること、銭湯

推し時代は室町時代中期から後期、足利義稙や義澄の時代でしたが今回の大河で明治時代に浮気しそうで困ってます


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