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【メンバー日記】ピアノの想い出(その5)


この頃の想い出の曲の一つに、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲:第18変奏」があります。これは、私が小学生から中学生にかけて毎週日曜日朝9時頃からNHKラジオで放送されていた「希望音楽会」の始まりのテーマでした。あまりにも有名な曲ではありますが、私がその曲名を知ったのは、ずっと後になってからでした。余談になりますが、当時、立体音楽堂という番組があり、NHKの第1放送と第2放送を使ってのステレオ放送が毎週行われておりました(無論、ステレオオーディオ装置などというものはまだ存在しません)。「2台のラジオを置いて別々のチャンネルに合わせ、その前にカーテンを掛けて、音楽ホールの雰囲気をお楽しみ下さい」というわけで、私宅でもどこからか別のラジオを持ち込み、カーテンこそ掛けませんが、神妙に並んで聞き入った記憶があります。

第18変奏曲は、フィギュアスケートでも度々用いられてきましたが、もっとも効果的に使われたのは、映画「スーパーマン」を演じたクリストファー・リーフ主演の「ある日どこかで」という映画だと思います。B級映画との酷評もされましたが、私にとっては忘れられない映画の一つです。そういえば、ジョン・バレーが作曲したこの映画のメインテーマも非常に印象的な名曲であると思います。

ともあれ、この第18変奏は、私がどうにかして弾いてみたい曲の一つでした。そこで、新装なった上野の東京文化会館の資料室に通ったものです。今もありますが、ここは音楽関係の図書館であり、楽譜の貸し出しや試聴を行っておりました。そこへ自分で引いた五線紙を持ち込み、借り出したスコアから有名なピアノ独奏部分の楽譜を筆写しました。

練習用のピアノは様々な方法で調達しました。大学の音楽部の部室に入り込み、空き時間のピアノを借用したり、楽器店が経営していた狭いピアノスタジオを借りたり、時には、ピアノのあるお宅に下宿していたこともありました。

ただし、筆写したのは第18変奏の内、ピアノが独奏するごく短い部分だけです。全部を弾きたかったものの、本来は協奏曲なのでピアノソロ用に編曲された楽譜を探さなければなりません。しかし、適当な楽譜が見つかりませんでした。後年になってヤマハショップで尋ねたところ、アメリカ版が発刊されているとのことで、ではそれをと言うと、「上級と並みがありますが?」と、まるで「上天丼にしますか、それとも並み天丼?」と問われたかのようで、「では、上天丼を」と注文しました。あまり難しいのも困りますが、易しい編曲は往々にしておざなりでつまらないものが多かったからです。1週間もして届いた楽譜の価格は1.85$でした。アメリカ人による編曲で、割合いと原曲の雰囲気に忠実でしたが、惜しいことに、それはニ長調に移調されたものでした。今では、プリント楽譜で、久木山直氏による原曲通り変ニ長調での編曲版が発売されています。

後半部で複雑なコードが徐々に下降してゆくこの曲を苦労して暗譜はしたものの、しばらく弾かないままに、もはや忘れてしまいました。再度、覚えなおしたいと思いますが、記憶力の低下に悩まされる昨今で・・・。


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