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【メンバー日記】亜麻色の髪の乙女と日傘をさす女


ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」を弾いていると、自然と思い出すのは、モネが描いた『日傘をさす女』の絵です。

もともと、ドビュッシーは「亜麻色の髪の乙女」の曲を、ルコント・ド・リールという詩人の同名の詩をもとに作曲しています。
詩の内容は、夏のある日に亜麻色の髪の乙女を見て恋に落ち、気持ちはどんどん高まるものの想いを伝えられないまま去ってしまう…というものです。切ない。

ドビュッシーの曲も本当にこの詩の通りです。
夏の風が吹く中で、亜麻色の髪の乙女への想いに気持ちがゆらゆらと揺れ動く様子、結局想いは伝えられず切なくも、さわやかな終わり方。好きな曲です。
個人的に、曲の中で一番強い音がmfというのも推せます。きっと、この亜麻色の髪の乙女に恋している人、シャイなインドア系の好青年なんだろうな…って勝手に妄想が膨らみますね。実際は知りません。

さて、私がこの曲を聴いて自然と思い浮かべてしまうのが、印象派の画家、モネの『日傘をさす女』です。
日傘をさす女はいくつかの作品があって、一枚目は女性の顔がはっきりと描かれた、1875年に描かれた、『散歩、日傘をさす女』。

最初の妻、カミーユとその息子を描いた作品です。幸せいっぱい。ただ、残念ながら、この作品が描かれた2年後、1879年にカミーユは亡くなってしまいます。

そして、2枚目は『左向きの日傘の女』と『右向きの日傘の女』。数年前にパリの美術館をふらふら巡っていた時にオルセー美術館で撮りました。

この絵が描かれたのは1886年。カミーユとは別の女性がモデルですが、カミーユを想って描いた作品と言われています。
絵全体としては柔らかな日差しとさわやかな風が吹き、一見明るい印象を受けますが、はっきりと描きこまれていない顔に、亡き妻を想う気持ちが読み取れて、切なさを感じます。

全体的に明るく爽やかな装いなのに、一筋縄にはいかないやるせない感情が、「亜麻色の髪の乙女」にも「日傘をさす女」にも、通じているものがある気がしてしまいます。

日差しがよく差し込む奏楽堂の会場で、亜麻色の髪の乙女を弾けたのは、出来栄えは置いておくとして、我ながら良い選曲だったと思います。


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