※この日記は前回からの続編です。
1月19日日曜日。ここは越後湯沢。前日にスキーとピアノ、温泉、美味しいお酒とご飯を存分に満喫した筆者だが、この日は都内へと向かいPH会の練習会に参加する予定だった。
朝、目覚めた筆者はまず宿の大浴場へ向かった。温泉に浸かりながら、今回の旅の余韻をじっくりと味わう。体の芯まで温まり、心も落ち着いたところで、東京へ戻る準備を整えた。
しかし、ここでふと寄り道をしようと思いつく。以前から気になっていたストリートピアノがあったのだ。
東京行きの新幹線に乗り込み、途中の高崎駅で下車する。駅の東口へ向かい1階に降りると、そこには一台のグランドピアノが置かれていた。
そのピアノは、赤茶色のボディが目を引く、艶消しの上品な仕上がりだった。角張ったフォルムと脚の曲線美が、存在感を放っている。デザインを手がけたのは、日本の近代建築にも大きな影響を与えたチェコの建築家、アントニー・レーモンド氏。このピアノは、1960年にヤマハからの依頼で設計された『レーモンド・モデル』で、とても希少な型だという。以前から写真で見て気になっていたのだが、実物は想像以上に迫力があった。
時刻は10時5分前。開放時間は10時からなので、まだ少し時間がある。並んでいる方は誰もおらず、一番乗りだった。静かな駅構内に響く足音を聞きながら、期待に胸を膨らませてその瞬間を待った。
10時になった。筆者はいつも通りベートーヴェンのソナタ第31番第1楽章を弾き始めた。65年前のピアノとは思えないほど状態が行き届いており、鍵盤の反応も良く、柔らかい音色が心地よく響く。駅構内の残響が音を包み込み、演奏していて気持ちが良かった。
演奏を終えると、年配のご夫婦が足を止めて拍手をくださった。お二人ともピアノを弾くそうで、続いて演奏を聴かせてくださった。
まずは奥さんの演奏。グリーグの小品が穏やかに響き、とても優しく丁寧な音色が心に染み渡る。繊細なタッチがこのピアノの良さを存分に引き出しているようだった。
次は旦那さんの演奏。子犬のワルツの軽快なメロディーが場の雰囲気を明るくし、駅構内に温かい空気が広がる。次第に多くの人が足を止め、自然と演奏に耳を傾けるようになった。
お二人の素晴らしい演奏に、筆者も心からの拍手を送った。
奥さんによると、この日の午後は高崎でブーニンのコンサートがあるという。ご夫婦揃ってとても楽しみにしており、遠方から前泊してきたそうだ。同じ楽しみを共有できるご夫婦、とても素敵だと感じた。
※当会メンバーのFさんもこの日コンサートに行かれていたそうで、羨ましい限りです。
奥さんがもう1曲弾いてほしいとリクエストをくださった。筆者はショパンの舟歌を選んだ。この曲もまた、特にお気に入りの一曲だ。特別な曲を特別なピアノで弾ける喜びを味わいながら、ゆったりとした旋律を奏でる。
演奏後、奥さんもこの曲が好きだそうで、音楽の話に花が咲いた。思いがけず、心温まる時間を過ごすことができた。今回もまた、素晴らしい体験となった。
【今日の飯テロ】
高崎は「パスタの街」で、美味しいパスタ屋さんが多くあるんだとか。
この日は駅前のお店で、看板メニューの「ニンニクと赤唐辛子のトマトソース」をいただいた。
酸味の効いたたっぷりのトマトソースがニンニクの旨味とよくマッチして、とても美味しかった。
なお注文してから、この後練習会に参加する予定だったことを思い出してハッとした模様…。
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さて、ここからは宣伝です。
2月9日(日)、三鷹市芸術文化センター 風のホールにて、当サークルの演奏会を開催いたします。
演奏会の特設サイトは、もう見たか?
皆様のご来場をメンバー一同心よりお待ちしております。
どうぞよろしくお願いいたします。