先週行われた関内での演奏会に観客として参加してきました。
3サークル合同の演奏会のため、いつもと少し違う雰囲気の中、定番のクラシックからポップス、ぶっつけ連弾まで、飽きることなく色々な演奏を楽しむことができました。
お世辞でなく全員それぞれがすばらしい演奏で、聴きながら「どんな練習をしたらこんなに弾けるようになるんだろう」「この人はいつからピアノを始めて、どんなレッスンを受けてきたんだろう」などとぐるぐる考え、気がつけば自分がピアノを始めた時の記憶を手繰っていました。
私がピアノのレッスンに通い始めたのは、確か6歳の頃だったと思います。当時はまだ自分の意志というものがなく、それまでは親に言われるがまま、特に楽しいとか辛いとかも思わず、ただエレクトーン教室に通っていました。
いつの間にかエレクトーンを辞めることになり、連れていかれたのはきょうこ先生という先生が教える個人のピアノ教室で、階段を上ると豪華な広いリビングにグランドピアノが置いてあり、そこがレッスン室でした。
もう20年以上も前のことなので、レッスンのことは断片的にしか覚えていません。
先生はたぶん当時30代前半くらいで、パーマをかけた長い髪と濃いくるっとした睫毛をしていて、いい匂いがした気がします。
部屋の隅に先生の家で飼っているリリーちゃんというチワワがいたこと、触ろうとすると面倒くさそうにじっとしてくれたこと、意外と毛並みがごわごわしていたこと、先生がリリーちゃんのことを「もうおばあちゃんだから元気がないのよ」と言っていたこと、リリーちゃんのベッドの側にはトンボの模様のランプがあったこと。
先生が着けている綺麗な石がついた指輪や赤い革のベルトの時計が羨ましかったこと、楽譜に書き込みをするときに使う万年筆のインクが青だったこと、この時初めて万年筆というものを知ったこと。先生のマニュキュアはお姫様みたいなピンクや赤ではなく、ベージュや煉瓦色だったこと。
これは母から最近聞いた話ですが、レッスンから帰ってくるたび、「今日の先生の指輪はこんな色で数は全部で4つだった」、とか「先生の着ていたワンピースが変わった形だった、私も欲しい」というような内容しか話さない私を見て、「この子は将来アクセサリーや服にしか興味を持たない、とんでもないバカ女になるに違いない」と心配していたそうです。
思い出そうとしてみましたが、残念ながらレッスン自体のことはあまり覚えていません。そういえば「『エリーゼのために』が弾ける人はピアノが上手、この世で一番難しいのは『幻想即興曲』でそれが弾ければピアノは卒業」、と思っていました。
その後、小学5年生くらいの時に中学受験の準備のためにその教室は辞めてしまいましたが、中学、高校と教室を変えながらも細々とレッスンは受け、結果、今でも趣味で続けています。
たまに「小さい頃に真面目にゴリゴリ練習してればもっと色々弾けたかもしれないのに!」と激しい後悔の念に駆られますが、幼い頃にピアノを嫌いにならずに続けられたのは、かわいいリリーちゃんとおしゃれな先生のおかげだろうな、とも感じます。
私も今では当時のきょうこ先生と同じくらいの歳になり、アクセサリーや万年筆も自分で買えるようになりましたが、また会えることがあれば気になっていることを質問してみようと思います。
「先生、あんなに大量に指輪着けてて、ピアノ弾きにくくなかったんですか?」
by t.n
ピアノ歴:小1~小4、中学~大学2年まで 昨年レッスン再開
好きな作曲家:ショパン、ラフマニノフ、ラヴェル(気分によって変わる)
その他の趣味:旅行と読書、映画鑑賞。最近一日1万歩生活を始めました。