メンバー日記
ピアノは不思議な楽器ですね。
弦楽器でありながら、弦をハンマーで叩いて鳴らす打楽器の様な要素も持っています。
なぜピアノは弦を弾く(はじく)のではなく、叩くのでしょうか?
→ 音の強弱を出すため
ハンマーを使って音を鳴らすピアノが発明される前から「チェンバロ」という楽器がありました。チェンバロは弦を爪で弾いて音を鳴らすはつげん楽器でした。
しかし、ピアノの発明者「バルトロメオ・クリストフォリ」は、チェンバロの音の強弱の表現のしづらさに不満を持ち、弦をハンマーで叩いて音を鳴らすピアノ(発明時の名前はチェンバロ)を発明しました。
クリストフォリはチェンバロの何がそんなに不満だったのでしょうか?
少し掘り下げてみました。
【チェンバロが音を出す仕組み】
まず、弦楽器で音を出すとはすなわち、弦を振動させるということです。
(音と振動について: 下記リンク3枚目の写真参照)
【メンバー日記】電子ピアノの技術-ストリングスレゾナンスについて
チェンバロの仕組み →
鍵盤から指を離した時に音を出さない構造(D)のせいで複雑に見えますが、要するに鍵盤を押したら爪で弦を弾いて振動させる仕組みになっています。
【チェンバロの特性】
弦がどれだけ強い音を出すかは、弦をどれだけ強く振動させるか、つまり弦をどれだけたわませるかによって決まります。
チェンバロでは弦のたわみ量を鍵盤で操作します。
チェンバロでの鍵盤操作と音の強さの関係のイメージは、←です。
このグラフから見えるチェンバロの特性は、爪が弦を下から上に押し上げて弾く仕組みゆえに弱音が出せないことです。クリストフォリはそれを不満に思い、弦を叩いて音を出すハンマーアクションを採用したピアノを発明しました。
チェンバロが弱音を出せない特性は、チェンバロが鍵盤の縦移動のみで音を操作することも要因の1つです。
例えばギターでは、横移動(弾く、弾かない)以外に、縦移動(ピックを弦から離す、離さない)で音の強弱を操作出来ます。
チェンバロの弱音が出せない特性を鍵盤楽器のまま解消する方法は、今のところ下記2つの方法しかなさそうです。
1. 弦に一瞬で力を与えて、一瞬で弦から離れる仕組みにする。
→ ハンマーアクション、等
2. 鍵盤操作以外に、音の強弱を人間が操作出来る仕組みを増やす。
→ エレクトーンの様なペダル操作、等
ハンマーアクションより先に、ペダル操作等によって音の強弱を変化させるピアノが発明されていたら、
今のピアノは、また違ったピアノになっていたのかもしれませんね。

チェンバロで弱音が出せない事をチェンバロの特性と捉えれば、チェンバロはチェンバロで完成した1つの楽器だと思います。