PH会のみなさま、こんにちは。
芸術の秋深まり気づけば12月に突入しましたが、まだ例年より暖かい日々が続いていますね。
さまざまなリサイタルにお出かけの方も多い季節かと思います。
先月は、ミューザ川崎シンフォニーホールの
ピアノリサイタルシリーズ「夜ピアノ」から2つの演奏会に行ってきました。
ミューザ川崎は、JR川崎駅からすぐの立派なコンサートホールで、収容人員2000名の大ホールです。
P席というのは、大きな会場のステージサイドやバックに設けられた席で、奏者を別の角度から鑑賞できる私の好きな座席です。(これは、ラテン語の「ポディウム」の頭文字で、指揮台という意味からきているそうです。)
オーケストラなどでは、指揮者の表情や、メンバーの譜めくり、管楽器や打楽器の持ち替えや準備の様子なども見られて、かなり臨場感があり、楽器を演奏していない時も忙しく働くメンバーの様子にワクワクしたりします。
音響的にはS席がベターなのでしょうが、S席と同じくらいの魅力がありながら、P席はチケット代金は低めに設定されていることも多く、機会があれば利用しています。
さて、そろそろ演奏会のレポへとうつりましょう。
1.11月11日 マルティン・ガルシア・ガルシア
(スペイン出身)
2021年に米国のクリーヴランド国際ピアノ・コンクールで優勝し、その3ヶ月後のポーランドのショパンコンクールでも3位入賞という驚異の実力ながら、演奏中終始歌うというなかなか珍しいタイプの若手演奏家さん。
とにかく楽しそうに演奏される陽キャなお姿を一度ライブで拝見したいと思い行って参りました。
ピアノ に合わせて歌うというより、鼻歌が、メロディをなぞっていたり、いなかったり。
ピアノが鳴っていない瞬間も自由に歌っていたり。ff(フォルテシモ)のときは、唸り声を上げたりも。。
シューベルト、ラフマニノフ 、リストのプログラムでしたが、とくにシューベルトはガルシアさんの歌がピアノ より目立つ部分もあり、弾き語りか?と思うほどでした。
最初は慣れなくて、ピアノの音に集中できなくて少々耳障り(ごめんなさい)に感じたりもしましたが、慣れてくると、個性として、愉しくなりました。
ああ、天才なんだなと。
ピアノって簡単な楽器なんでしたっけ?と思うほどに、多彩な音色でそれはそれは楽しそうに演奏されていました。
こんな素敵なバーカウンターがあり、20分の休憩時間に、大人たちで賑わっており、つい並んで泡を注文してしまいました。
アンコールは、一曲目、聴いたことある素敵な曲〜と思ったら、PHメンバーさんが秋の定期演奏会で弾かれたドビュッシーの前奏曲よりヒースの茂る荒れ地 でした!夢心地でP席から眺めていました。
3曲のアンコールは、それ自体がプログラムのようなバラエティに富む構成で、最後はシューベルト楽興の時第6番 で締めくくられ、穏やかなそのメロディをガルシアさんの影響で口ずさみながら帰路につきました♪
(ウキウキしすぎて、間違えてJR品川駅までグリーン席に座ってしまい、途中車掌さんに促されて一般席へと移動し、現実に引き戻されました!)
2.11月29日 アレクサンドル・カントロフ(フランス出身)
パリオリンピックの開会式で、セーヌ川のほとりで雨に濡れながらラヴェル をさりげなくかつ情熱的に演奏されるそのお姿に、虜になった人も多いのではないでしょうか。私もその1人で、早速その日のうちにリサイタルを探してこのチケットを入手したのでした。
2019年にチャイコフスキー国際コンクールピアノ部門で優勝した方だと知り、期待は膨らみます。
演奏が始まると、三音目くらいからもう別世界でした。
ああ、(ガルシアさんみたいに声は出してないけど)ピアノが歌ってる!フランス人だからか、シャンソンみたいと思いました。しかし以前聴いたルイサダさんの演奏は華やかでキラキラとした全く違う音色だったので、ルーツの問題ではなさそうです。
終始夢の中のような、霧のかかった森の中のような、雲の上のような、音色に包まれる感じ。それでいて、どんなに音が多く速くなっても、決して濁ることなくクリア。
フォルテは強い音でなく、豊か、広い、深いといった印象で、驚異的な表現力でした。
さながら、鍵盤を使って、弦から立ち昇る振動〜音〜を自由自在に操るマジシャンのようでした。
そういえば、弦を叩くハンマーの先には固くしたフェルトが使われていることを納得するような、未知のピアノの音が優しく響き渡る演奏会でした。
圧巻のプログラムはこちら
後でその巧みな演奏と余裕の佇まいからは信じがたい、齢27歳であることを知り、大変驚きました。
一流の若手ピアニストの演奏会を立て続けに体験し、ピアノとは、溢れる才能をもった選ばれし者の演奏を「鑑賞」するのが正しい楽しみ方なのでは?とすら思いましたが。。
NHK「3ヶ月でマスターするピアノ」の録画を見ながら、様々な思いで一生懸命ピアノに向き合うレスナーさんたちの姿を観て、ああ、やっぱり、自ら「演奏」する楽しみも大切にしたいなと思い直すことができ、拙いながらも楽譜と向き合う日々へと戻りました。
来るPH会クリスマスパーティーでは、定番曲とともに、子供用の教本より冬の星座の曲も弾いてみようかと、今更ながらワクワク譜読み中です。
みなさんの演奏もとっても楽しみにしています♪
(M.M記)