1. ホーム
  2. コラム
  3. 【メンバー日記】岐阜市役所・大垣駅・大垣市多目的交流イベントハウス ストリートピアノ

どうも、T.N.です。今日も元気にストリートピアノ日記を書いていきたいと思います。

3月21日(金)、この日は有給を取って岐阜を訪れました。天気にも恵まれ、春の気配が感じられる穏やかな一日。今回の目的は、岐阜市内とその周辺にあるストリートピアノを巡ることです。

15時頃、岐阜市役所に到着しました。1階のラウンジには、テーブルと椅子がいくつか置かれていて、訪れた人々がそれぞれの時間を過ごしていました。読書にふける人、談笑する学生らしきグループ、書類を広げるビジネスパーソン。そんな落ち着いた空間の一角、ガラス張りの明るい窓辺にグランドピアノが設置されていました。ヤマハのC3です。

早速ピアノの前に座り、今回もベートーヴェンのソナタ30番の1楽章を演奏しました。弾き始めてすぐに、音の響きの豊かさに驚きました。音が広い空間にしっかりと広がり、「こんなに鳴らしていいのかな」と思うほどだったので、普段より控えめなタッチを意識しました。ピアノはしっかりメンテナンスされていて、タッチの反応も滑らかで、安心して身を委ねることができました。

演奏を終えると、後ろで聴いていた女性が拍手を送ってくれました。彼女も演奏をするそうで、今練習中の「英雄ポロネーズ」を披露してくれました。情熱的でありながらも丁寧に音の流れが感じられる素敵なもので、聴きながら思わず息をのむ瞬間が何度もありました。

その後、彼女と少し話をしました。彼女はこの場所が好きで、よく弾きに来ているとのこと。「人に聴いてもらえると頑張ろうって思えるんですよね」と言っていたのが印象に残りました。

話をしている間にも、何人かの常連さんがピアノを弾きに来ていました。
「この方の演奏、すごく優しい音色で好きなんです」
「細かいところまで気遣いが行き届いていて、演奏って人柄が出ますよね」
と常連さん一人ひとりの演奏について彼女が話すのを聞いて、この場所が単なるピアノ設置スペースではなく、人と人をつなぐ場になっているのだと感じました。

私が神奈川から来たと伝えると彼女は驚き、
「岐阜にようこそ。なかなか弾ける機会もないでしょうから、ゆっくり弾いていってくださいね」
と声をかけてくれました。
その後も、彼女と交互に何度か演奏を楽しみました。

気づけば、外はすっかり暗くなり、ラウンジの人もまばらに。そんな中、一人の男性が現れました。彼が弾き始めたのは、なんとショパンのバラード第4番。その演奏は、隅々まで神経が行き届き、構成の緻密さと自由な表現が見事に融合したものでした。これが無料で聴けてしまうなんて、本当に贅沢な時間でした。

演奏後、彼を交えて三人でピアノ談義に花が咲きました。同じバラード第4番を弾いた者同士(レベルはまったく彼に及びませんが)、共通の話題も多く、会話は自然と盛り上がりました。どうやら彼もベートーヴェンの後期ソナタが好きなようで、「28番が好きなんです」と言いながらリクエストまでいただきました。28番も私の好きな曲のひとつですが、まだ取り組めていない曲です。「それは次に岐阜に来るときまでの宿題にします」とお伝えし、再会を誓ってその場を後にしました。

次に向かったのは、大垣市。彼女におすすめしてもらった場所の一つです。バスと電車を乗り継ぎ、大垣駅へ。改札を出て通路を進むと、ひっそりと置かれたアップライトピアノが目に入りました。

大垣だけに、思わず「おお、楽器」と声が漏れました。

早速、弾かせていただきました。ここでは、ベートーヴェンのソナタ31番1楽章を選びました。ピアノはヤマハ製で、明るく澄んだ音色が特徴的。タッチ感は比較的軽めで、指にすっと馴染むような弾きやすさがありました。ちょうど帰宅ラッシュの時間帯ということもあり、後ろでは多くの人が行き交っていました。誰かが立ち止まるわけではなく、それでも背中に多くの方の気配を感じつつ、演奏をさせていただきました。

次に向かったのは、大垣駅から徒歩10分ほどの場所にある「大垣市多目的交流イベントハウス」。

ここは予約制とのことで、事前に電話をかけて確認したところ、21時から1時間利用可能とのこと。駅の南口を出てアーケードのある商店街を抜け、街中に張り巡らされた水路や大垣城の天守を横目に見ながら歩いていくと、目的地に到着。建物の入口近くには、地元の郷土史の資料が展示されたコーナーがありました。気になった一冊を手に取って、少しばかり目を通します。関ケ原の戦いにおいて要衝となったこの地の歴史に思いを馳せました。

さて、21時。ピアノの開放時間です。そこに鎮座していたのは、ヤマハのU7。1960年代当時の技術を結集して作られた最上級モデルです。ピアノの横には、演奏者がコメントを書き残すノートも置かれていて、このピアノを弾きに名古屋や岐阜市内はもちろん、関東から遠征してきた人も少なくないようでした。

受付に行ってピアノの鍵を受け取り、楽器の蓋を開けます。鍵盤にタッチした瞬間、いつも弾くアップライトピアノとは明らかに違う感覚。そう、このピアノの鍵盤は象牙なのです。その重みを指先でしっかりと感じながら、この楽器の上品で落ち着いた音色をたっぷり堪能しました。

1時間も弾かせていただけるとのことで、ベートーヴェンのソナタ第30番、31番、32番を順番に演奏することに。周りには誰もおらず、静寂の中でのびのびと音に集中できる贅沢な時間でした。

そして、約1時間後。いよいよソナタ第32番のフィナーレ。トリルのなかにそっと溶け込んでいく静寂、その儚さをこれほどまでに柔らかく、深い響きで表現できることに自分でも驚きながら、最後の一音を見送りました。

ここまで味わい深い楽器で、心ゆくまで演奏できる機会はそう多くありません。今回この場所で演奏を楽しめたのも、岐阜市役所でお会いした彼女のおかげです。

とても豊かで、心に残る一日でした。岐阜で出会った人々との時間が、この旅を何倍にも価値あるものにしてくれたのだと思います。

人との出会いは、まさに神様からのギフト。
これからも、そんなギフトを大切にしていきたいと、改めて感じました。

ピアノサークル ピアノを弾きたい!

Contact

Mail

info@pia-no.com

WEBSITE

https://pia-no.com