どうも、T.N.です。今日も元気にストリートピアノ日記を書いていきたいと思います。
8月15日(金)、今回は平塚市を訪れました。平塚駅から旧東海道沿いを歩くこと20分ほど。昔の宿場町のエリアにはいくつもの寺院が点在しており、そのひとつが今回の目的地・教善寺です。
門をくぐって境内を進むと、本堂から微かにピアノの音が聴こえてきました。近づくと、中からガラス戸を開けた方が「ピアノ弾かれますか?」と声をかけてくださり、そのまま中に案内してくださいました。
本堂の中は、立派な仏具や見事な彫刻が並ぶ空間。その一角にはグランドピアノが置かれていて、ちょうど小学生くらいの女の子が演奏を終えたところでした。周りではお母さんやお友達と思われる親子が温かな拍手を送っており、和やかな雰囲気が広がっていました。さらにピアノの下には小さなトイピアノがあり、横のテーブルには絵本も並んでいて、子どもたちが楽しめる工夫されているのも印象的でした。
この日は「おてらピアノ」と呼ばれるイベントの日で、本堂のピアノを誰でも自由に弾けるように開放していたのです。こうした場で演奏できるのは、とても貴重な体験だと感じます。
その場にいた皆さんから「どうぞ弾いてください」と声をかけていただき、お言葉に甘えて演奏させていただくことにしました。選んだのはベートーヴェンのソナタ31番の3楽章。大屋根が開放されているうえ、設置場所の効果もあってか、音が本堂の中でよく反射し、フーガの旋律が豊かに響き渡ります。ピアノのコンディションも素晴らしく、とても大切に扱われてきたことが感じられました。外からは蝉の声だけが聞こえる中、静かな空間でピアノの響きに身を委ねる時間はとても贅沢で、心が洗われるようでした。
演奏を終えると、一人の女性から「31番、本当に好きな曲なので、ここで聴けて良かったです」と声をかけていただきました。自分の好きな曲を共感していただけたことが嬉しく、寺院だけに心にジーンときました。
その後は再び子どもたちの時間。コンクールに向けて練習中の曲を披露する子もいれば、鍵盤を1本の指で弾いて嬉しそうに笑顔を見せる子、音楽に合わせて飛び跳ねる子もいて、それぞれが思い思いに「おてらピアノ」を楽しんでいました。
やがて開放の終了時刻が近づき、住職さんが本堂にいらっしゃいました。少しお話を伺うと、このピアノはもともと住職さんの伯母さまのお宅にあったものを調整して本堂に置くことにしたのだそうです。お盆の時期だけでなく、ハロウィンやお花見の頃など、人が集まる折に合わせて開放しているとのこと。ピアノを通じて地域の人々が交流できる場をつくろうという住職さんの思いに、強く心を動かされました。
こうした素晴らしい環境で演奏できたことに感謝しつつ境内をあとにしました。また次の開放の際にも、ぜひ「おてらピアノ」を弾きに訪れたいと思いました。