どうも、T.N.です。
今回から新シリーズを始めたいと思います。
題して、「飛行場で弾こう」。それは、人々が行き交う空港という特別な場において、ピアノを介した偶然の出会いや心の触れ合いを描いた物語です。続くかどうかは筆者の気分次第です。
さて、初回は新千歳空港からお届けします。筆者は札幌に出張することが多いのですが、そのたびに楽しみにしていることがあります。それは、帰り際に新千歳空港でピアノを弾くことです。
国内線ターミナルから国際線ターミナルに向かう途中に、そのピアノはひっそりと置かれています。国内線ターミナルの賑わいとは対照的に、この場所は人通りが少なく、とても落ち着いた雰囲気です。
普段は演奏する方を見かけることもあまりないのですが、この日は少し違いました。ピアノの音が聴こえてきたのです。気になってその場に向かってみると、ちょうど1人の女性が演奏しているところでした。
彼女が弾いていたのは、ベートーヴェンの「月光」第3楽章。熱気に満ちたその演奏に、思わず足を止めて聴き入ってしまいました。
演奏が終わると、拍手を送りました。彼女は「私はもう沢山弾いたので、是非弾いて下さい」と言い、順番を代わってくれました。筆者は彼女に続き、「月光」の第1楽章を弾くことに決めました。ちょうど昨秋のジョイントコンサートで弾いた曲で、それ以来しばらく触れていなかったのですが、先ほどの演奏を聴いてつい弾きたくなったのです。
木の温かみが伝わる素敵なピアノを前に、筆者は椅子に腰掛けました。鍵盤に触れると、いつものような柔らかい音が広がります。お気に入りのピアノでの演奏を堪能することができました。
しかし、途中で暗譜が飛んでしまうハプニングが発生。どうしようかと戸惑っていると、後ろから彼女がそっとタブレットを差し出して譜面台に置いてくれました。そこには「月光」の第1楽章の楽譜です。楽譜にびっしりと書き込まれたメモが曲への深い思いを物語っているようでした。
お礼を伝え、再び演奏に戻ります。少しぎこちなさはあったものの、彼女の助けのおかげでなんとか最後まで弾き切ることができました。演奏が終わると、彼女は温かい拍手を送ってくれました。
「まさかここで月光を聴けるなんて思っていなくて、びっくりしました。大好きな曲なので嬉しいです。」と彼女は言いました。話を伺うと彼女は韓国人で、北海道によく旅行に来るそうです。行き帰りには必ず新千歳空港のピアノを弾くのが楽しみだとのこと。「ここのピアノ、私のお気に入りなんです」と嬉しそうに語る姿が印象的でした。
そして続けて、「でも韓国にもストリートピアノがありますよ。今度は韓国に弾きにきてくださいね」と言いました。筆者はその言葉に頷き、次の旅先を心に刻みました。
国境を越えて、同じ曲を介して出会った一人の演奏者。その思い出は、筆者にとって忘れられないものになりました。
【今日の飯テロ】
新千歳空港の立ち食い寿司店にて。鮮度抜群のお寿司はどれも大変美味しかったです。北海道ならではの希少なネタも楽しむことができました。
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