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  3. 【メンバー日記】館林駅・佐野市役所・栃木駅 ストリートピアノ

どうも、T.N.です。今日も元気にストリートピアノ日記を書いていきたいと思います。

5月4日(日)、この日もまた新しいストリートピアノとの出会いを求めて旅に出ました。今回最初に訪れたのは群馬県館林市。東武線の館林駅で電車を降り、改札を抜けて東西自由通路へと進むと、すぐ目に飛び込んできたのはヤマハのアップライトピアノ。

ピアノを近くでよく見ると、長年の使用を感じさせる趣があり、鍵盤の色合いや風格のある木彫装飾からも、時代を重ねた楽器であることが伝わってきます。
この場所はあまり人通りもなく、通路全体が静かで落ち着いた空気に包まれていました。

せっかくなので、いつも通りベートーヴェンのソナタ30番の 第1楽章を弾かせていただきました。鍵盤に触れると、象牙特有の適度な重みが指先に伝わってきます。音色はとても柔らかく、消音処理もされていないので、空間全体にふんわりとした響きがしっかりと広がっていきます。

演奏を終えてから、設置されていた案内パネルを読み、あらためてこのピアノの歩みに驚かされました。このピアノは、1930年代に製造されたヤマハのアップライトピアノ。元々は兵庫県芦屋市の個人宅に置かれていたもので、第二次世界大戦の空襲を免れ、さらに阪神淡路大震災で家屋が倒壊した際にも、奇跡的に損傷を免れたのだそうです。

「美術館に飾るのではなく、今も現役で人々に感動と安らぎを届けてほしい」
そんなオーナーの方の思いから、この地でストリートピアノとして新たな役割を担うことになったとのことでした。実際にその音に触れてみて感じたのは、このピアノが長年生き続けているという不思議な生命力のようなもの。優しい音色の中には、確かにそうした何かが宿っていた気がします。

演奏を終えた後は、東武佐野線に乗り、渡良瀬川を越えて栃木県佐野市へと向かいました。佐野駅で電車を降りて5分ほど歩くと、佐野市役所に到着します。
こちらの市役所では、毎月第1日曜日に1階ロビーのグランドピアノが、ストリートピアノとして開放されています。

館内に入ると、ちょうど誰かが弾いているところでした。バッハの清らかなフーガが、静かなロビーに響き渡っていて、その音に触れた瞬間、自然と心が癒されていくのを感じました。

日曜日の市役所ですが、ロビーには十数名ほどの方々が集まっていて、それぞれソファに腰かけながら、演奏に静かに耳を傾けていました。

しばらくその雰囲気に浸っていると、職員の方が名簿を手に「弾きますか?」と声をかけてくださいました。希望者は順番に弾くことができるとのことで、ありがたく名前を書き、演奏させていただくことにしました。

こちらに設置されているのは、ヤマハのグランドピアノ。ピアノの傍には譜読み用のライトも用意されていて、演奏者への細やかな配慮から、このイベントにかける職員の方々の温かい想いが伝わってきます。そして何より驚いたのは、大屋根を全開にして弾かせていただけるということ。これはストリートピアノとしては、なかなか貴重な体験です。

この場では、ベートーヴェンのソナタ31番から3楽章を演奏しました。このイベントに合わせて、なんとつい先日調律を済ませたばかりとのことで、和音のひとつひとつが澄んだ響きをもってロビー全体に広がっていきました。開放的な空間にのびやかに響く音、弾いていてとても気持ちの良い時間でした。演奏を終えると、その場にいた方々から温かな拍手をいただき、胸が熱くなりました。

その後、一人の年配の男性が声をかけてくださいました。なんと彼も、筆者と同じくベートーヴェンのソナタ30番・31番を長く弾かれているとのことで、筆者が演奏を始めた瞬間、「まさかここでこの曲が聴けるとは思わなかった!」と驚いたのだそうです。曲の魅力や表現のニュアンスについてしばらく語り合い、同じ曲を愛する者どうしの深い共感を感じるひとときとなりました。

続いて登場したのは、今回が初めてのストリートピアノという、ひとりの女の子。「これ弾きたいんですけど、誰か一緒にやりませんか?」と譜面を持って、緊張しながらも会場全体に呼びかけ、連弾のパートナーをその場で募っていました。自然と集まった演奏仲間とともに始まった連弾は、会場の空気をさらに温かくしてくれました。演奏後、彼女が「ずっとこういうのやってみたかったので、本当に来られて良かったです」と笑顔で話しているのを見て、ストリートピアノが持つ力をあらためて実感しました。

その後も、ヴァイオリンとの即興セッションが自然と始まり、音楽を通じた交流の輪がさらに広がっていきました。日曜の市役所のロビーが、1台のピアノを中心に、こんなにも豊かな時間を生み出していることに、深い感動を覚えました。

佐野市役所での温かな交流の余韻を胸に、筆者は両毛線に乗って、隣の栃木市へ向かいました。

栃木駅の改札を出ると、目の前にヤマハのグランドピアノが置かれていました。駅構内の広々とした一角に設置されており、その落ち着いた佇まいが印象的です。
筆者が着いたときには、ちょうど地元の学生さんと思しき二人が連弾を楽しんでいるところでした。二人で音を合わせるその様子が微笑ましく、見ているこちらの心まで温かくなりました。演奏後に拍手を送ると、二人は少し照れたように笑って、駅の通路へと歩いていきました。

そのあと、しばらく誰も弾く様子がなかったので、筆者も1曲弾かせていただくことにしました。この場所では、ベートーヴェンのソナタ31番 から1楽章を演奏しました。静かな空間に音がしっかりと響いていきます。人通りはあまり多くなく、広々とした空間で音に集中できる環境が整っており、落ち着いて演奏に向き合うことができたのはとてもありがたい体験でした。

演奏を終えたあと、次の電車まで少し時間があったので、ピアノのそばのベンチに座ってしばらく過ごすことにしました。するとそこへ、一人の女性の方がやって来て、静かに椅子に腰かけると、さらりとショパンのエチュードを弾き始めました。

何曲か続けて演奏される中で、特に印象に残ったのが10-4。怒涛のように駆け抜ける音の連なり、その迫力ある演奏に、思わず聴き入ってしまいました。生の演奏を、これほど間近で、しかも無料で聴けるというのは、本当にありがたいことです。旅の終盤で、こんな贅沢な時間に出会えたことに、感謝の気持ちを覚えました。

今回も、素敵なストリートピアノの旅をすることができました。また是非弾きに行きたいと思います。

さて、ここからはちょっとしたおまけを。佐野市役所でお話しした地元の方が、「もし時間があるなら、ぜひ近くのあしかがフラワーパークのライトアップを見ていくといいですよ」と勧めてくださいました。せっかくなので、その言葉に背中を押されるように向かってみることに。

園内に足を踏み入れると、辺り一面に咲く藤の花々が、ライトに照らされて幻想的な光を放っていました。夜の闇の中、風に揺れる花房が浮かび上がる光景は、とても美しく、本当に来てよかった。そう思える素晴らしい体験となりました。

【今日の飯テロ】
佐野の名物グルメってなに?」「さあのぅ?
……というダジャレはさておき、佐野といえばやっぱり佐野ラーメンです。

あっさりとしたスープに、もっちりとしたちぢれ麺がよく絡みとても美味しかったです。

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