よく、年齢を重ねると以前は大好きであった脂っこい食べ物に興味がわかなくなる、などと言う話を耳にします。自分に照らし合わせても若干其の傾向を感じることもありますが、まだそれほど顕著でないのは喜ばしいことだと思っています。
その逆のケースとなりますが、音楽に対する嗜好もまた年とともに変化することがあると痛感しております。
学生時代からベートーベンが大好きで、交響曲、協奏曲、四重奏、バイオリンソナタそして勿論ピアノソナタを貪るように聴いておりました。レコードからCDに変わってもそれはかわらず文字通り自分の部屋が埋もれてしまうといっても大げさではありません。そんな具合でしたがピアノソナタに関しては初期から中期の作品群を偏愛し、後期のものは勢いのあるハンマークラービア以外はどうもあまり琴線に触れないと思ってきました。1970年代、当時新進気鋭のポリーニのベートーベン最初の録音が28番以降の5曲のソナタで、期待はずれもあり、冷ややかに見つめておりました。
そんな自分でしたが、ここ数年、30-32番を実に頻繁に聴いており、いよいよ先生にも31番のフーガ弾きたいと申し出る始末です。どないした石尾くん!
ひとつの推測はベートーベンがこれらを作曲した年齢が54,5歳。楽聖と自分を比較するのは誠におこがましいのですが、ようやく還暦を過ぎるころからベートーベンの達観の境地に反応する成熟が自分にも訪れたのか?このように考えると内部からじっくりした喜びが湧き出てくるおもいです。
というわけで、このあたりもまた自分のライフワークとなってまいりました。弾きたい曲が多すぎる!というのは嬉しい悲鳴と言うべきでしょうか?