皆様のピアノに真摯に向かう日記に刺激を受け、私も“たまには”ピアノメインの話題で日記を書こうと思います。
…と思いましたが、私の本業はハードウェア開発なので、せっかくなので物理っぽい話を織り交ぜてしまいます。はるか昔にニュートンさんが見つけた、万有引力の法則と作用反作用の法則を使います。
===== 長ったらしく脱線します =====
万有引力の法則というのは、「全ての物はお互いに引き合っている」という法則です。引き合う力(=重力)は物体の質量に比例します。
物理をちょっとかじった人に、
私とあなたも、万有引力で引き合っているんですね!
と気持ちが悪いことを言われたとしても、残念ながら真実です。引き合う力の大きさは距離が離れるほど弱くなるので、「面倒臭いな」と思ったら、その人とはそっと距離を置くのが良いでしょう。
作用反作用の法則というのは、簡単に言えば、「何かを押したら同じ力で押し返されますよ」ということです。
あの有名なハンムラビ法典の一節
「目には目を、歯には歯を」
はイメージ的には作用反作用の法則みたいなものでしょう。ただし、ある銀行員の名ゼリフである、
「やられたらやり返す。倍返しだ!」
は「同じ力」というところに反しており、あとで余計な軋轢を生むかもしれません。やり返すのもほどほどにしておきましょう。
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いつも脱線が長いですが、本題に入りましょう。
私は本サークルでは珍しい、ポップスしか弾けないピアニストです。よく、ポップスとクラシックは求められる技術が違う、と言われますが、確かに部分的にはそうなのかもしれません。一番目立つのはグリッサンドだと思いますが、これについては「コツはノリです」としか言えないので、脇に置いておきます。
私が思う、クラシックとの間の最も大きな違いは「ポップスは左手と右手の役割が明確である」ということです。私は「ピアノでロックを弾く」を身上としていて、左手がベースとドラム、右手がメロディというようなイメージを持って弾いています。右手と左手で弾いている楽器が違うという感じですね。
右手がメロディーというのはわかりやすいですが、問題は左手の方です。ベース、ということで低音でのオクターブ奏法が基本になるのですが、ここで「打楽器っぽさ」を出してやると格段に格好良くなります。打楽器っぽさを出す手っ取り早い方法は、そう、跳躍です。あえてレガートに引かないことで打楽器っぽさを強調するような感じです。
ポップスピアニストのまらしぃさんという方、サークルでも有名ですが、まらしぃさんアレンジには左手の跳躍が頻繁に出てきます。と言うか基本的に跳躍してます。跳躍によってベースの厚みが出ると言うのも大きいですが、打楽器っぽさを出すと言う狙いもあるのかなと個人的には思っています。
こう言うこともあり、ポップスの左手というのは、主役ではないので目立ちませんが、常に曲の下支えをする必要があり、かなりタフさが求められます。
ポップス弾きの左手を体験してみたいという方、まず左手で、フォルテで延々とオクターブを弾いてみてください。慣れていないと相当疲れると思います。その中で跳躍とかを一杯織り交ぜようとすると、技術というより体力的に辛くなってきます。
そこで登場するのが、万有引力の法則(=重力)と、作用反作用の法則(=反発力)です。ようやく出てきました。
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実は、我々は、指の力をほとんど使わずに鍵盤に力を与えることができます。そう、重力です。鍵盤を「押す」のではなく、鍵盤に指を「落とす」ことをすればいいわけです。ちょっと乱暴な表現ではありますが、ピアノを打楽器だと思えばあながち的外れでもないのではないでしょうか。地球にいる以上、我々は地球に引っ張られているわけですが、ピアノの前に座れば、ピアノに引っ張られていると言えなくもないわけで、どうせなら引っ張ってもらって楽しましょうという考え方です。
続いて、作用反作用の法則ですが、これはちょっと感覚的なものが強くて説明しづらいです。でも、ここが私流ポップス奏法の肝なので、なんとか言葉にします。
跳躍を例に話をするのが分かりやすいですかね。跳躍は動きを分けると
鍵盤を「押さえる」→手の位置を「移動」→鍵盤を「押さえる」
という3つになると思います。ただ、「移動」の時間は実際は音を鳴らしていないわけで、小刻みな跳躍をやる場合など、「移動」をすることに意識を向けると間に合わなくなります。そこで、
「抑えて移動」→「押さえる」
という2つの動きで跳躍することを考えます。ただ、手を移動させるためには、手を持ち上げなくてはいけません。そこで、作用反作用の法則=反発力をうまく使ってやります。鍵盤を押さえることによって得られる、ピアノからの反発力、これを使って手を移動させます。感覚的な言い方で申し訳ないのですが、
ピアノからの反発力に”乗って”手を移動するような感じです。
ここで大事なのが、打鍵するときに、ちゃんと打鍵しきるということです。遠慮して中途半端に打鍵すると、反発力も小さいので、結局自分の筋肉を使って手を移動しなければなりません。先程、ピアノに「手を落とす」と書きましたが、フォルテで弾くときは高いところから、ピアノで弾くときは低いところから、手をちゃんと落としきるという感じです。
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いつもみたいにまたダラダラと長く書いてしまいました。読み返してみて、我ながらものすごく分かりにくい文章だと思います。これが理解できたら、日本語読解能力はかなりのものだと言えると思います。
大事なことなので言っておきますが、これ全部我流です。昔習っていた先生にこんなことを教わったことはないし、サークルでも(ちょっと微妙な顔をされつつ)「独特な弾き方ですね」と言われることがあります。正直言って、今回紹介した弾き方をクラシックでやったら怒られると思います。。。
まぁでも、少しでも何かの参考になれば幸いです。皆さんも是非、効率の良い体の使い方を見つけてください!