奏楽堂から始まり、二ヶ月にわたって続いた発表会ラッシュもいよいよ葛飾で最後ですね。葛飾には出演予定ですが、春の卒コン最後の会場という事で、しんみりとした、TPOを弁えた選曲をしてしまいました。例によって出張続きで練習できていないのですが、弁えるなら弁えるで、意地でもちゃんと弾きたいと思っています。
今回はその曲をストリートピアノで弾いた話をしたいと思います。
最近の日記を見返してみると、ストリートピアノネタの時は文体を崩していることに気が付きました。という訳で、小説風に。舞台は我らが横浜、、、と並ぶ港の大都市・神戸です。
今回は、中学校2年生くらいの人が書いた文章みたいになってしまいました。恥ずかしいですが、冷静に考えて中2の頃から精神的に成長した気がしないので投稿します。
クソ、右手が疼いて投稿ボタンを押してしまうぜ…!!!
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新神戸駅。どうして新幹線が止まる駅は「新」という文字がよくつくのだろうか。本当にどうでもいいな。シンプルに、新幹線が止まるから「新」って事で良いか。
という訳で、月曜の昼間、新神戸駅にいる。昼間ということは、残念ながらこれから仕事だ。
新神戸駅にピアノがあるとは聞いていた。聞いていたが、ここまで堂々としているとは聞いていないぞ。改札のすぐそこかよ。こんなところで弾いたら新幹線使う人全員に丸聞こえじゃないか。なんて苦笑いしてしまうが、足は一直線にピアノに向かう。
今回はちゃんと心の準備をしてきた。ピアノを弾くにせよ、仕事をするにせよ、何事も必要なのは準備だと思う。ピアノを弾いて恥をかく覚悟はして来た。仕事の準備?そっちはしてきてないです。
流石に鍵盤は戻るよな、と思って鍵盤を押してみる。流石に鍵盤は戻る。が、高音部があまり鳴らない。なるほど。左手にある掲示ボードをよく見てみる。「優しくお弾きください」とある。なるほど。
マリオ定跡は通用しないな。
しっとり系の曲を弾くか。行けそうなのは「Just be Friends 」くらいしかないけど。来たばかりの場所で失恋ソングを弾いてしまうのはどうかと思うが、仕方がない。春の発表会用に、仕上げてはある。
鍵盤に手を置く。暖房は効いているが、鍵盤は冷たい。緊張のためか、指先も冷えている。でも大丈夫だろう、心の準備はして来たから。弾き始めよう。
曲の1、2番は、恋人と別れるしかないという現状に呆然とし、悲しみに貫かれる様な感じ。ここまでは技術的に難しくないので、考えごとをする余裕がある。失恋についてはよく分からないから、別の昔のことを思い出している。
…ああ、ここで回想シーンとか出してしまうと、予算を削られたB級映画みたいになってしまうのでそれは止めよう。セガールは黙って敵をボコボコにしていれば良いのだよ。
間奏を終えて3番に行くと、曲調がガラッと変わる。楽しかった日々を思い出しながら、それに別れを告げる決意をする、そんなシーンを思い浮かべながら、力強く、必死に、弾く。
やっぱり、優しく弾くなんて無理だったね。出し切るときは出し切らないと。
「出し切っているか!?(中略)応援があったからじゃん!?自分一人じゃ出来ないんだよぉー出し切るのは!」
あの熱すぎる元テニスプレイヤーのおじさんが言っていたな。
私は自分の好きなように演奏をする。それは変わらない。しかし人前に出ると、どう聞こえるか、どう思われるか、どうしても気になってしまう。私はチキンで弱い人なのだから、仕方がない。
でも、「この中の誰か一人くらいは、僕の演奏を応援してくれるんじゃないかな?」と思ってみると、不思議と諦めがつく。練習会だって発表会だって同じこと。期待されているなら、覚悟を決めて、腹を括ってやるしかない。例えそれが妄想であっても、ですよ。
曲の最後は、私らしくもなく静かだ。最後に少しだけ昔を懐かしんで、そして静かに前を向く、というような感じ。こういう曲も弾くんですよ?ここにいる人、誰も私のこと知らないだろうけれど。
なんとか弾き切れた。本番も弾き切れるのだろうか。
曲の余韻に浸っているような素振りで、訳もなくコートを整え、訳もなく荷物の位置を整え、腕時計を二度見し、ゆっくりと鍵盤にカバーをかけ、ゆっくりとピアノの蓋を閉じる。そしてゆっくりと、何事もなかったかのように振り返る。
少し前までピアノを弾いている奴がいたなんて想像がつかないくらい、何事もない、普通の光景だ。これで良い。
あーあ。誰か仕事でも僕のこと応援して業務を肩代わりしてくれねぇかな。人使い荒すぎだろう、この米搗きバッタが!
…変なこと考えてないで仕事いこ。