どうも、T.N.です。今日も元気にストリートピアノ日記を書いていきたいと思います。
今回まず訪れたのは、JR高崎線の上尾駅です。改札を出ると広々とした通路が伸びており、その一角に可愛らしいペイントが施されたアップライトピアノがありました。
早速弾かせていただくことにしました。選んだ曲はベートーヴェンのソナタ30番から1楽章。ソフトな音色が印象的で、天井の高い空間に優しく広がっていきます。人通りの多い場所でしたが、時折立ち止まって耳を傾けてくださる方もいて、とても嬉しく感じました。
演奏を終えたところで、年配の男性がこちらに歩み寄ってきて、こう言いました。
「兄ちゃん、連弾やろうぜ」
少し驚きつつも、せっかく声をかけていただいたのでお受けすることにしました。
「俺がメロディ弾くから、合わせて弾いてな。」
男性が弾き始めたのはビートルズの「Let It Be」。
その素朴なメロディに合わせ、筆者は和音を添えるように伴奏をつけていきます。途中でテンポが揺れたり、何度か止まりつつも、次第に呼吸が合っていく感じが心地よく感じました。
弾き終えると、男性はどこか晴れやかな表情で
「ありがとう、兄ちゃん。」
と一言。
そのまっすぐな言葉が胸に残りました。普段ストリートピアノを巡っていてもその場に居合わせた方と連弾する機会というのはなかなかなかったのですが、今回こうして現実のものとなり嬉しかったです。
上尾駅をあとにし、高崎線をさらに北へ進みました。続いて下車したのは鴻巣駅。そこから歩くこと20分ほどで、鴻巣市役所に到着しました。
玄関の近くには1台のアップライトピアノが置かれていました。時刻はちょうど12時、窓口の職員さんたちがお昼休みに入るところでした。こちらのピアノは平日の昼休み限定でストリートピアノとして開放しているとのこと。この日も開放時間が始まりました。
ここでは、ベートーヴェンのソナタ31番から1楽章を弾かせていただきました。設置場所の影響もあるのか、音が壁にほどよく反射してロビー全体に広がっていく感覚があります。明るく澄んだ音色がとても魅力的で、気持ちよく演奏することができました。
弾き終えると、ひとりの男性がそばで待っていて、温かい拍手を送ってくださいました。
次は彼の番。リュックの口からあふれんばかりに楽譜が詰まっていたのですが、その中から一冊を取り出し、譜面台に置いて演奏を始めました。
彼は久石譲さんの曲を何曲かメドレーで弾かれていました。その温かみのある響きに思わず息を呑むほどで、お昼休みの静かなロビーに旋律がやさしく満ちていきました。素晴らしい演奏に心を打たれ、筆者も拍手を送りました。
「ピアノは数年前に始めたんです。最近は久石譲さんの曲にすっかりハマってしまって…」
演奏を終えた後、彼はこう話し始めました。YouTubeで弾いてみたい曲を探しているうちに、弾きたい曲の楽譜がどんどん増えていったこと。
「やりたい曲がたくさんありすぎて、練習の時間が足りないんですよ」と目を輝かせながら語る姿がとても印象的でした。音楽へのまっすぐな情熱を前に、筆者も大いに刺激を受けました。彼に素敵な演奏を聴かせていただいたお礼を伝えて、市役所をあとにしました。
鴻巣駅からさらに高崎線を北へ進みます。次に下車したのは熊谷駅。改札を出ると広いコンコースが広がり、学生さんや買い物客の皆さんで賑わっていました。コンコースを北側に進んでいくと、1台のアップライトピアノが置かれていました。
外装には熊谷の伝統工芸である「熊谷絣」のペイントが施されており、精緻な文様に思わず見入ってしまいます。細かな織柄が美しく、存在感のあるピアノでした。
ここでは、ショパンの舟歌を演奏させていただきました。弾き始めて驚いたのは、アップライトとは思えないほどの力強い響きです。コンコースのつくりもあるのか、音がよく広がり、弾いていて気持ちが高まっていきました。
このピアノは、もともと市内の保育園に10年ほど眠っていたものだそうですが、そんな歴史を感じさせないほどメンテナンスが丁寧に行き届いており、とても弾きやすく感じました。演奏を終えると、そばのカフェスタンドのお客さんが温かい拍手を送ってくださり、心がふと和らぐような気持ちになりました。
熊谷駅での演奏を楽しんだあとは、今度は秩父鉄道に乗り換え行田市駅へ。外はすっかり暗くなり、駅周辺も落ち着いた雰囲気に包まれていました。商店街の灯りもまばらな中、歩くこと10分ほど。ぽつんと灯りがともる建物が見えてきます。ここが「行田市商工センター」です。
館内に入り2階へ上がると、長テーブルが並ぶ広いコミュニティスペースがあり、静かな空間が広がっていました。読書をされている方が一人いらっしゃるだけで、ゆったりとした時間が流れています。ガラスケースの中には行田市の工芸品がずらりと並び、特に足袋はこの地域で昔から作られてきた歴史ある特産だそうです。
まさに「行田の産業だ」といったところでしょうか。
そのそばには1台のグランドピアノが置かれていました。こちらは2022年に閉校した市内の大河原小学校で、42年間多くの子どもたちに親しまれてきた歴史あるピアノで、現在はストリートピアノとしてこの場所で再び活躍しているとのことです。
ストリートピアノの注意事項の掲示に目を向けると、なんと持ち時間はなんと1人30分ということ。ここまで存分に演奏できる場所というのは、筆者自身初めてでした。
今回演奏したのは、ショパンの舟歌、ベートーヴェンのソナタ31番1楽章、そしてソナタ32番2楽章。弾き始めると、グランドピアノらしい重厚な響きが空間に満ちていきます。長い年月の中で育まれてきたような奥行きのある音色が印象的でした。
弾き始めてから約30分後、いよいよソナタ32番2楽章のフィナーレへ。トリルのなかに主題がそっと浮かび上がり、柔らかく消え入るように響いていきます。最後の和音が静かに空間へ溶けていくと、夜の空気がその音をそっと受け止めてくれるかのようでした。これだけ素晴らしい楽器で存分に演奏を楽しむことができ、とても贅沢な夜でした。
【今日の飯テロ】
この日は、熊谷の名物「熊谷うどん」のお店を訪れました。こちらでは、なんと自分で香辛料を調合して「My七味」を作れるということ。なかなか面白い体験ができました。平打ちの麺はもちもちで食感が良く、とても美味しくいただきました。
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