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【メンバー日記】蕨・西川口のストピ巡り

どうも、T.N.です。

梅雨も明け、夏本番ですね。皆様お身体にはお気をつけてお過ごしください。
さて、今日も元気にストリートピアノのレポートをしていきたいと思います。

今回訪れたのは京浜東北線の西川口駅です。駅の東口を出て住宅街の中を15分ほど歩いていくと、ショッピングセンター「イオンタウン蕨」に到着しました。

最近リニューアルオープンしたばかりという明るくきれいな店内を奥へと進んでいくと、スーパーマーケット「マックスバリュ」がありました。普段行かない街のスーパーに立ち寄る機会があると、ついワクワクして色々見てしまうのは筆者だけでしょうか。買い物をして会計を済ませると、袋詰めの台の傍にヤマハのクラビノーバがあるのを見つけました。

譜面台に置かれた「演奏リスト表」に名前を書き、早速弾かせていただくことにしました。こちらのピアノ、有難いことになんとクラシック名曲集の楽譜まで備え付けられていました。パラパラとページをめくりつつ、昔弾いた曲の数々を思い出すのも楽しいものです。今回はその中から、シューベルトの即興曲Op.90-2を久しぶりに演奏しました。

音量は抑えめに設定されていましたが、鍵盤のタッチも良く気持ちよく弾くことができました。ピアノの横にはちょうど七夕コーナーが設けられており親子連れの姿がちらほらと見えましたが、中にはじっくり演奏を聴いてくれた子もいたのが印象に残っています。演奏を終えると、有難いことに警備員さんから拍手を頂くことができました。

お店を出てもと来た道を引き返します。西川口駅を超えて反対方面(西口側)に歩いていくと、風俗街の一角から突然ピアノの音が聴こえてきました。バッハの平均律第1巻第1曲です。音のする方に目を向けると、そこには酒屋さんがありました。店頭にはキーボードが出されていて、自動演奏の音が流れていたようです。

こちらはいわゆる「角打ち」、店頭でお酒を飲むことができる酒屋さんです。折角なので美味しいお酒を楽しめればと思い店内に入ると、若いマスターが迎えてくれました。

このお店では、地元埼玉のお酒を応援しているそうです。筆者も日本酒は好きなのですが、埼玉のお酒はほとんど飲んだことがなかったので、マスターにおすすめを伺ったところ、親切に色々と紹介してもらえました。

こちらが秩父の「武甲正宗」。すっきりとした辛口の味わいが、まさに筆者好みでした。

こちらは小川町の「帝松 初ばしり」。夏限定の商品だそうです。さわやかな香りがとても印象的でした。

お酒の肴も素晴らしかったです。
もつ煮込みは自家製味噌のコクが絶妙で、柔らかいモツに旨味が染みわたっていました。ちなみにこの器は、川口の工芸品の鋳物を使っているそうです。このように地元の伝統を大切にされているのは、いいものですね。

え?「ソース焼きそばも鋳物の器で出てくるのか?」だって?そうっすね。

筆者は、店内のカウンターの上にも別のキーボードがあるのを見つけて興味が湧き、店内と店頭のキーボードについて聞いてみました。いずれもマスターの私物なのですが、この日(7月6日)は「ピアノの日」ということでストリートピアノとして出しているとのことでした。

※ピアノの日:1823年7月6日、オランダ商館医となるドイツの医師シーボルトが日本に初めてピアノを持ち込んだ日

筆者もピアノを弾いていること、今日はお店のSNSでのストリートピアノ企画の告知を見て訪れたことを伝えると、マスターは喜んでピアノの話をしてくれました。
彼は小学生の頃までピアノを習っていたそうで、今もピアノが好きでYouTubeでよく演奏動画を見ているそうです。

サービス精神たっぷりの彼は、自身も店内のキーボードで演奏を披露してくれました。幼少の頃に弾いた子ども向けの練習曲は今もお気に入りで、時折弾いているそうです。筆者は知らない曲でしたが、その美しいメロディーに心打たれました。また、ポケモンの戦闘シーンの曲もレパートリーの一つだそうで、実際に目の前で聴かせてくれました。筆者と年代が近いこともあり、同じ思い出を共有する者同士、楽しいひとときを過ごしました。

「店内のキーボードも店頭のキーボードも自由に弾いてください」

マスターのお言葉に甘えて両方弾かせていただきました。お酒が回って良い感じに高揚した状態で演奏するのもまた面白いものでした。

しばらくキーボードを弾いて遊んでいると、マスターが特にお気に入りの曲を教えてくれました。モーツァルトのピアノソナタ第8番 K.310。第1楽章の深刻さと疾走感がたまらないそうです。

まさかこの場所でK.310という曲名を聞けると思わず、筆者もテンションが上がりました。実は筆者も昔、劇場版「ピアノの森」を見てこの曲を気に入り、こっそり練習していたのです(きちんとレッスンを受けたわけではなく、自己流でしたが)。

遠い記憶を頼りに第1楽章の冒頭部分だけ店内のキーボードで弾くと、マスターが言いました。

「おお、これが聞きたかった!」

記憶が曖昧で指も思うように動きませんでしたが、温かい拍手を貰えました。また次にピアノを開放するときにはちゃんと練習してくることを約束しました。
(家に帰ってから改めてK.310の楽譜を見て練習していますが、楽譜通り正確に弾くのは、適当に弾いていた頃よりもずっと難しいことを痛感しています。完成はいつになるやら…。)

演奏とピアノトーク、お酒を楽しんでいたところ、バイオリンケースを背負った男性が店に来られました。こちらの常連さんだそうです。マスターが彼に声をかけます。

「こちらの方(筆者)、ピアノ弾けるんですよ。何かセッションでもどうですか?」

「いいですね、ぜひ」

彼はそう答えバイオリンを取り出しました。こうして即興でのセッションに挑戦することになりました。

彼がまず弾いたのは「人生のメリーゴーランド」。郷愁を誘うバイオリンのメロディに合わせてリズムを刻んでいきます。ピアノは普段一人で弾くものですが、こうして他の楽器とともに演奏できるのは、とても新鮮で楽しい体験でした。

「いいですね、じゃあ次の曲行きましょう!」

彼は嬉しそうにそう言って、今度は「情熱大陸」を弾き始めました。筆者も以前ピアノソロアレンジを弾いたことがありますが、バイオリンとセッションすることはかねてからの夢でした。躍動感あふれるバイオリンの演奏に応えるように伴奏を始めました。私たち二人のセッションはさらに盛り上がっていきました。

ここでマスターが筆者たちにこう言いました。

「クラシック曲だと何かありますか?」

彼は「G線上のアリア」を弾き始めました。バイオリンの優しく穏やかな音色が店内に響き、それを堪能しながら伴奏させてもらえるのは、この上ない喜びでした。

筆者からも彼にリクエストしました。ベートーヴェンの「スプリングソナタ」の第1楽章です。今から十数年前、高校の文化祭のときにバイオリン弾きの友人とともに演奏した曲で、初めてのバイオリンとのセッションでソロとは違った難しさを噛みしめつつ必死に練習に臨んだ思い出の曲です。彼は快くリクエストに応じてくれました。久しぶりにバイオリンと合わせて演奏すると、青春の日々がよみがえってくるようでした。

最後にモンティの「チャルダッシュ」を一緒に演奏しました。この曲はテンポの速い部分とゆったりした部分があり、二人で息を合わせるのが楽しい挑戦でした。演奏が終わると、その場にいらっしゃった他のお客さんからも拍手をいただくことができ、楽しいセッションの締めくくりとなりました。

マスターによると、このお店では時々今日のような音楽系のイベントを開いていて、ピアノも開放しているので、また是非来てほしいとのことでした。筆者も楽しい時間を過ごすことができたお礼を言い、お店を後にしました。

こうして、思いがけない出会いや即興セッションを楽しみながら、音楽とお酒に満たされた一日が終わりました。帰り道、次にまたこの場所で演奏する日のことを思いながら、心地よい余韻に浸ることができました。


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