0

【メンバー日記】バッハのオルガン曲について


メンバー日記

写真1の説明バッハのオルガン曲について

バッハのオルガン曲は、弾いていて元気が出てくる曲が多いのです。駒場祭でひく変ホ長調BWV552もそのひとつ。少し曲が長いので(全部で16分)怖れ多くも前奏曲を少しカットしています。その時の言い訳をプログラムに書いています。以下、少し長いですが…

・バッハの作曲方法
 バッハは倹約家で、印刷の銅板や紙を余したりよけいに使うことは、彼の性格上、許し難いものでした。バッハの無限の音楽の世界を制限するものがあったとすれば、それは教会の言うことや音楽上の慣習ではなく、作曲する曲のぺージ数だったようです。
 作曲するときに先に小節数から決めていたことも普通にあったようで、わかりやすい例としてインヴェンションとシンフォニアがあります。初級者、学習者向けなのでページをめくらせず2ページで終わること、見開きいっぱいに紙を使うこと、この2つが曲集のルールでした。そのため、作曲していてせっかく乗ってきた曲想が与えられた小節数ではおさまりきらず、なんとかつじつまを合わせ突然ぶつ切りで曲が終わってしまうような印象を与える曲もいくつかあります(特にシンフォニア)。
 構成の大枠をまず決定し、テーマをどの声部でどの調性で、関係調への転調はいつどのくらい、不自然にならないように経過句を使うこと、これを曲の長さと性格に合わせて楽器を使わずに机の上で最適解を出す、これがバッハにとっての作曲の作業でした。
 書いた音符の量から推察するに、おそらく大して時間はかけず、ぱっぱっと決めていったと思われます。まさに超人的であります。たくさんいた子供の嬌声、泣き声を聞きながら頭の中で対位法を組み立てていたはずです。その際、小節数まである程度自由にコントロールするのことも習慣的になっていたと推測されます。


写真2の説明  そこで、今回のプレリュードとフーガ変ホ長調BWV552です。全てのオルガニストにとって最も重要なレパートリーといわれる名曲ですが、本日は演奏時間の関係でプレリュードは少し割愛させていただいております。このプレリュードは構成が堅牢で、フランス風序曲の付点音符のテーマと速い音型のフーガが交互に登場し、提示部、展開部、再現部的に分けることができる大曲ですが、曲想を着実に展開している箇所と、すこし寄り道をしているあそびがあります。
 小節数の制約と戦ったバッハの草稿は、多少そぎ落としても主張が通る強い生命力があります。今回は全体の流れを壊さないように、作曲者の言いたいことは網羅できるように、転調が不自然にならないように、畏れ多いことではありますがバッハの作品の最高峰に属するこの曲の小節数を減らさせてもらいました。ですので、この曲を記憶している方にとっては、申し訳ございませんが違和感があると思われます。本日はご容赦のほどを。
 バッハにとってのオルガンは、ショパンにとってのピアノと同様に、何でも自分の思い通りにできる最高の手兵、格別のパートナーでありました。そのおびただしい作品群は、教会のための音楽、名人たちのための器楽曲等に分けられますが、もっともストレスを感じないで自分を表現できたのが自分の演奏用に書いたオルガン曲であったと思われます。
 生粋のオルガニストであったバッハのオルガン曲には、バッハの好奇心旺盛、前向きな性格が強く出て新しいアイデアがどんどん溢れ、自由闊達、未来志向、積極性、堂々、見事な構築美、圧倒的、崇高、清々しさ、など演奏会用オルガン曲を形容するとポジティブな言葉ばかりが並ぶことになります。活力をいただける稀有な偉大な曲集として今後も付き合っていただこうと思っています。 弾くのは体力が必要でしんどいですが、演奏後の充実感はとても大きいのです。


写真3の説明

写真4の説明

似顔絵KAZU
バッハをオルガンで弾くのが趣味です。プレリュードとフーガとか、トッカータとフーガとか。
でも家にある楽器はピアノなので、普段はピアノをひいています



Leave a reply

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>